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出張の夜の徒然をムフフなアレで慰める

出張の夜は退屈なものだ。

掃除も洗濯もしなくていい、もちろん自炊もしない。
テレビは普段から観ないから何をやっているかわからないし、本を読み切ってしまったら明日の新幹線の中でやることがなくなってしまう。

こんなとき、飲める人ならその土地のバーの開拓にでも勤しめばいい。
だがワタシはあいにく下戸だ。

しかも「ビール1杯で真っ赤になっちゃうんですぅ」みたいな半端な下戸ではなく、ひと舐めでべろんべろんに酔っ払えるレベルの下戸。
祖母は毎晩晩酌していたウワバミだったのに、養命酒すら飲めなかった祖父に似てしまったようだ。悔しい。

飲めないくせに、バーは好きだ。
落ち着いた内装で、気の利くバーテンダーがいて、社会的に地位のあるオジサマがひとりでフラッと入るような、そんな店が好き。

でも飲めないと「ジンジャーエールとチョコレートください」なんてオーダーをせざるを得ないから、店に申し訳なくてワタシひとりでは行きづらい。
多分、気の利いたバーテンダーなら「そんなことお気になさらず。いつでもいらっしゃって好きなものを飲んでいただければ、それでいいんですよ」と言ってくれるのだろうけど、でも気になるんですよ。

飲めないけど、食べることには自信がある。
というのなら飯屋を開拓すればいい。
ジンジャーエールを飲んでいても、井之頭五郎くらい食べれば店としては良い客に違いない。
だがあいにくワタシはゴローちゃんほど食べられない。

第一、接待やら何やらで一通り食べてしまっているのだ。それで更に飯屋巡りなんて、それこれゴローちゃんでもなければ無理。

で、結局ワタシは何をしているかというと、マッサージをやってもらっている。

ビジネスホテルの枕元に「60分いくらです。深夜2時まで受付中!」とか立札が置いてある、アレ。

最初は、荷物がひどく重かった日とか仕事が立て込んでいて疲れている日とかだけ頼んでいたのが、出張の度にやるようになってしまった。
別に出張先でなくてもマッサージは受けられるけど、ホテルに来てもらってやるのは気楽なんですよ。
シャワーを浴びてしまって後は寝るだけって体制に整えて、マッサージで全身ほぐしてもらって、気持ち良くなったところでぐーぐー寝てしまう。
これがマッサージ屋に行ってやってもらったら、ある程度顔や髪を整えないとホテルまで帰れないってのが気になる。
自宅に出張マッサージしてもらうってのもちょっと違う。掃除しなきゃとか気になることが多くて寛げないと思う。


一口に「ビジネスホテルのマッサージ出張サービス」といっても行く先々で特徴が出る。
白衣を来た整体師のお兄さんが来てくれるときもあるし、昔ながらのいかにも按摩さんって風情のおばさんが来てくれるときもある。
人によって当たり外れも、もちろんある。

一度、広島のビジネスホテルに来てもらった按摩さんは大当たりだった。
凝りのひどいところはパワフルにほぐし、さほどでもない部位は優しく撫でさする。
ツボを的確に押さえて、みるみる血流が良くなった。

あまりの気持ち良さにワタシがぽわ~っとなっていると、その按摩さんも心得たもので「延長しますか?」と唆してきた。
45分が90分になってワタシの出張手当は根こそぎ持っていかれたわけだが、後悔はしていない。


東京なんかの街だと出張マッサージは深夜まで受け付けてくれるが、片田舎のビジネスホテルではそうもいかない。
22時が受付終了、なんてところもある。

こっちゃ会議やら接待やらを一通り終えてホテルに向かうわけだから、一息つけるのは当然22時過ぎになってしまう。
定宿にしていたビジホで受付終了が早いことに気づかずに電話をしてしまい、「22時までなんですか……」といたく落胆したことがあった。
すると、次にそのビジホを電話で予約したとき「マッサージの時間を予め仰っていただければ、遅い時間まで待機させますよ」と言われた。
なんとまあ親切な。


という小さな驚きや喜びがあったりもするので、出張の夜長はマッサージを頼んでしまう。

 

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